2008年7月18日金曜日

ダイナミックレンジ(ついでに無線の話)

もう35年以上前の話。 世の中、真空管からトランジスタに移行している頃ですが、コンテスト(48時間で、どれだけ多くの国や局と更新するかを競う競技)等で、このトランジスタ製の受信機を使うと、何かとっても賑やかなのに、うまく聞こえない、全体にガサガサ、ワサワサしているのです。 多分、航空母艦等の軍事通信が集中する状況でも同じような問題があったのでしょう。 受信機のダイナミックレンジが話題としてアメリカ当たりで取り上げられ始めました。 感度を上げて、更に80db以上のダイナミックレンジを確保する為には、全体の利得配分の見直し等、非常にデリケートな設計が求められていました。 頭にいきなりアンプをくっつけると、アンプその物の出すノイズと、下手をすると後段の飽和で必ずしも感度も、ダイナミックレンジも広がらないのです。 アポロ計画が終了して大量に解雇になったNASAの元技術者たちが、この様な技術をアマチュアの市場に製品として出してきました。 しかし、これは、ビックリするほど単純な、まっすぐなデザインの代物で、ほんとに目から鱗だったのを記憶しています。
自分なりに少し理解できたので、実験して当時のHamJournalに記事を書いてみましたが、国内メーカの物はダイナミックレンジが60db程度しかなく、大変悪い結果となった為に、結構風当たりが強かったことを記憶しています。 実際にはアンプの利得の最適化だけではなく、周波数変換の為の局発のレベルなど、最適化の為には真空管時代とは比べ物にならない位、設計が複雑になっています。
大学の学部学生の頃は、専攻(農学)とはまったく関係の無いこの話を一生懸命追っかけていました。 

最近のアマチュア無線の機械の広告を見ると、殆ど全部に「ダイナミックレンジXXdb」と謳ってあるので、「あー、やっと常識として定着したんだなー」と思っています。 技術って、認識されてから常識として定着するまでには思いの外時間が係る物なのですね。

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