Seam In Action を読んでいると、component, context, contextual variables, conversation 等聞き慣れない(?)言葉が沢山出てきます。 「これって、知らないのはあなただけ」みたいな本が多かったのですが、Seam In Action ではかなりのスペースを割いて説明されています。 なーんだ、英語圏のJava屋さんだって、ほんとの所分かっていないんじゃん! と、何か一安心。
多くのソフトウェア関連の翻訳本でカタカナが氾濫していますが、使われているカタカナ名詞の意味していることが、完全に理解され(合意され)ているのか、時々不思議に思うことがあります。 いや、理解できていないのは自分だけだと思って、何か非常に情けなくさせられるような気がします。 勿論、カタカナ名詞を適当な日本語の接続詞で繋いだだけのような翻訳本もありますが、この類の物はちらっとみれば翻訳者が理解していないことは分かるので、こういったものを別にしても、の話です。
外資に30年勤めていて、ビジネス上でもこの類のミスコミュニケーションには悩まされました。 適当な日本語が無いと、カタカナ名詞でそのまま使いますが、これが人によって解釈が大幅に違うのに、お互い分かったような気で話が進み、最後にお互いの解釈が違ってうまくいかなくて、お互いを非難する(したくなる)事は多々ありました。 特にカタカナ英語を多用して、「自分は色々な事を知っている。偉いんだ。」といった自己陶酔にも似た状態に居る人が結構居るのですが、そういう人に限って良く分かっていないんですよね。 (解決方法は唯一、めんどうでも具体的に詳細を説明して、相手と合意する。 その時出来るだけ動作や行為を含む名詞を使わない)。
おもしろい例として(実害はありませんが)、AccountabilityとRespoinsibilityがあると思います。 日本には責任の上位概念としてのAccountabilityというものが元々存在しませんので、英文の解説書などから漠然と、Responsibilityより偉いんだー、と納得させていましたが、そのうち日経新聞等で「説明責任」という翻訳を使い始めました。 翻訳としては、大変すっきりしていて良い訳語だとは思いますが、本来の言葉が持っている意味については別途、詳しい説明を加えないと伝わらないと思います(そもそも、存在し無かった概念ですから)。 {武士社会では「説明責任」はなかったのでしょうね。 「問答無用で腹切ってお詫びしちゃった」から)。
訳語が良すぎて、昔からあったような顔しているから危険です(知らない方が悪い事になってしまいますが、ちゃんとした解説が無ければ、この単語から直接伝わる範囲を越えた意味を持っているのですから)。 私は,今でも何とはなく「説明責任」(言い訳する責任?)がResponsibilityの上位概念であることには違和感を感じています。
ビジネスで良く使われる言葉でおもしろいのは、イニシアティブ: フランス語(だったかドイツ語だったか、有名な将軍の戦略の教科書に使われている)の軍隊用語が、ビジネス英語に転用されたようですが、そもそも元言語から英語へ転用したときに、英語圏でこの単語の意味が共通の認識を得ているのか甚だ疑問を感じますが、それをまた日本語に持ってきてカタカナで使っている時には尚更です。
しかし、この言葉、明治時代に直接軍隊用語として日本語に訳されているのです。 日本語訳は 「独断専行」!!
後に、アホな軍人が多用していたこの言葉の語源ですが、これも本来の意味を歪めて使われているようです(元の意味は、想定外の状況が起こった場合、現場の責任者の責任で、任務の遂行の為の最善の方法を考え実行する、くらいの意味のようです。 あくまでも遂行すべき任務は事前に定められ与えられたものですから、上部の意思を無視して勝手に侵略するような行為とは違います)。
昨日の「その時歴史が、、、」でも同じような話がありました。 「国体」って言葉、あんだけ使われていて、日本の方向性の判断の基礎になっていたのに、その解釈は人によって違っていたって?
ファジーでアジャイルな文化も心地よいものではありますが、もう少し言葉の定義に気をつかう必要があるように思います。 食料自給率ではありませんが「ソフトウェア関連の本のカタカナ名詞を50%以下にする運動」とか、少なくともカタカナ名詞には詳細な説明をつけるとか、、、。
2008年9月12日金曜日
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