絶縁耐圧という言葉で表現される値が非常に高く、tanδも十分に低い素材が多く存在し、「高耐圧、小型コンデンサ」が自作できるのでは? と試作してみましたが、思惑とはずいぶんかけ離れた物だったので、原点に戻って、「どの程度の高周波での耐圧が得られるのか?」基礎実験をJR1OAO中島さんのご協力を得て行いました。 またMLA48のミーティングにて、JA4CKC藤間さんのDC耐圧試験機と中島さんの高周波耐圧試験を、会員の皆さん自慢の?コンデンサについて実験できたので、その結果も併せて、今までの知見をまとめてみました。
1)JR1OAOの実験装置
136KhzのXcvrに直列共振回路を繋ぎ、200pFのVVCに並列に供試コンデンサを繋ぎ、VVCを調整して受信ノイズで共振点を求め(200pFで共振するよう事前に調整されている為、10~150pF程度までの測定が可能)、
どこまで電流が流せるか、徐々にパワーを上げて行き最大電流を求める。
電流が求まれば電圧は Vpeak=sqrt(I /(2πfC) )で得られます。
2)MLA48で供試されたコンデンサ(バリコン)から得られた知見
通常のエアバリコンではOAOの装置で放電が始まる電圧と、CKCのDC耐圧試験機での放電電圧には殆ど差が無い、或いはDC耐圧試験機の結果の方がやや低かった。
VVCは表示通りの耐圧を示した(当たり前か)。
PTFEを誘電体として挟み込んだ場合には、その厚みにより高周波での放電開始電圧は1.7KVから3~4KV程度の範囲で変わるが、DC耐圧はいずれも >3KV で測定範囲を超えていました。
3)PTFEテープ、PTFEシュリンクチューブ、PTFEチューブ、PTFEシート、ポリイミドテープ、高分子量ポリエチレンの検討。
番外: 高分子量ポリエチレン
滑り性、接着性(接着できる)、電気特性(ポリエチと同じ)等から、使用することを考えましたが、適用温度が低く(60~80°C)、メーカのデータも無いために、今回は検討しませんでした。
①ポリイミドテープ(カプトンテープ)寺岡の50μ、3Mの25μのテープを供試
東レ・デュポンの仕様書に「コロナ放電開始電圧」(部分放電開始電圧)という表示がされており、絶縁破壊電圧は非常に高いが、実際の使用に際しては「コロナ放電開始電圧」に拘束されます。
複数回重ね巻きをすれば、それなりの耐圧が得られます(3回重ねまで確認)が、フィルムが固く綺麗に重ね巻きするのは難しく(皴や隙間ができやすい)、あまり適当とは判断できませんでした。 (数値データからは20回重ね位で、凄いものが出来そうですが、、、)
②PTFEシュリンクチューブ 中興化成の22φの物を使用
20φの銅パイプに22φのシュリンクを被せヒートガンでシュリンクさせましたが、均一に収縮させるのが難しく、気泡(空気だまり)が出来てしまいました(22φは2重に重ねて耐圧を上げようとしたため)。
単価も高価(6K円/m) で、要領を習得するまでには至っていませんし、測定結果(後述)から、シュリンクにするメリットがあまり、ありませんでした。
③PTFEシート、PTFEチューブ
チューブの場合、内径を挿入する銅パイプと同じにして、 銅パイプを低温で冷やして収縮させ、チューブに挿入して固定する方法が考えられます。 また、シートの場合は、外側のシリンダに沿わして挿入し、内側の銅パイプを滑らせる方法が考えられ、2mm厚、5mm厚のシート、チューブで下地さん、戸越さんの作品が測定に供試されましたが、PTFEの厚み以上の成果が出ておらず、後述のPTFEテープの重ね張りと、耐圧からはあまり差が無いように思われました。
④PTFEテープ 日東電工 No903. 0.23mmx50mmx10m
PTFEが何故接着できるのか不思議ですが、製品として市販されているので、これを使って、色々実験してみました。
④-1 基礎試験 - 重ねると耐圧は上がるのか?
右のような実験装置を使い、シリコーン系の接着剤(多分20μ程度)層があるので、重ねると耐圧が上がってゆくのか確認してみました。
結果、左のように、重ね合わせる枚数に応じて耐圧が上がってゆくことが確認されました。
また、この実験中に電圧を上げて行くと銅の電極の周辺からコロナ放電が始まるのが観測されました。
1mm厚のPTFEシートで実験しても、5KV以上では周縁でのコロナ放電が観測され、放電した後の銅の電極表面を見てみると、右のように変化が認められ、PTFEと銅電極の隙間で放電していたのではないかと推察されました。 この結果から、構造上、想定している誘電体を挟んだシリンダ形状のコンデンサでは5KV程度が限界ではないかと思われます
④-2 20φの銅パイプで重ね張り、小端の処理などの検討
左図のように、20φの銅パイプにPTFEテープを巻き付けて、その上から、0.1/0.2mm厚の銅シートを巻き外側シリンダを形成し、夫々の高周波耐圧を測ってみました。
基礎実験の値と数値が少し違いますが、重ねることにより耐圧が上がってゆくことは確認できます。 ここで使用したテープは幅が50mmなので、20φのパイプを覆うには幅が足りません(75mm幅のテープが必要)ので、継ぎ足し継ぎ足し、満遍なく規定数以上の重ねとなるようにしていますが、これがシートによる基礎実験との値の違いの原因かもしれません。
3次元上でテープと銅パイプの中心軸を平行にすることは非常に難しい(ちょっとでもズレると業界用語でいう「筍」になってしまいます)ので、縦方向に一回毎に張り付けるようにしています(右図)。
また、電荷が溜まるシリンダの先端の処理についても、検討してみましたが、「折り返し」ても「1cm伸ばし」ても、大差は認められませんでした(誤差の範囲?) 外側シリンダの作成方法として、ペンチで摘まんで外側にヘリを出すのと、丸めてヘリを作らない方法(内部の隙間のでき方が少し違う?)でも比べてみましたが、これも大差はありませんでした。
ただ、データから、重ね巻きの時は内側のテープの端は折り返し、最後の1-2回は先を1cm伸ばす。 外側のシリンダは丸めてカシメを作らない方法とする事にしました。 また、PTFEは柔らかいので、外側シリンダの端の内側シリンダと接触する部分については、薄いPTFEテープを張って、直接銅の端がPTFEを削らないようにしておく必要があります。
1)JR1OAOの実験装置
136KhzのXcvrに直列共振回路を繋ぎ、200pFのVVCに並列に供試コンデンサを繋ぎ、VVCを調整して受信ノイズで共振点を求め(200pFで共振するよう事前に調整されている為、10~150pF程度までの測定が可能)、
どこまで電流が流せるか、徐々にパワーを上げて行き最大電流を求める。
電流が求まれば電圧は Vpeak=sqrt(I /(2πfC) )で得られます。
2)MLA48で供試されたコンデンサ(バリコン)から得られた知見
通常のエアバリコンではOAOの装置で放電が始まる電圧と、CKCのDC耐圧試験機での放電電圧には殆ど差が無い、或いはDC耐圧試験機の結果の方がやや低かった。
VVCは表示通りの耐圧を示した(当たり前か)。
PTFEを誘電体として挟み込んだ場合には、その厚みにより高周波での放電開始電圧は1.7KVから3~4KV程度の範囲で変わるが、DC耐圧はいずれも >3KV で測定範囲を超えていました。
3)PTFEテープ、PTFEシュリンクチューブ、PTFEチューブ、PTFEシート、ポリイミドテープ、高分子量ポリエチレンの検討。
番外: 高分子量ポリエチレン
滑り性、接着性(接着できる)、電気特性(ポリエチと同じ)等から、使用することを考えましたが、適用温度が低く(60~80°C)、メーカのデータも無いために、今回は検討しませんでした。
①ポリイミドテープ(カプトンテープ)寺岡の50μ、3Mの25μのテープを供試
東レ・デュポンの仕様書に「コロナ放電開始電圧」(部分放電開始電圧)という表示がされており、絶縁破壊電圧は非常に高いが、実際の使用に際しては「コロナ放電開始電圧」に拘束されます。
複数回重ね巻きをすれば、それなりの耐圧が得られます(3回重ねまで確認)が、フィルムが固く綺麗に重ね巻きするのは難しく(皴や隙間ができやすい)、あまり適当とは判断できませんでした。 (数値データからは20回重ね位で、凄いものが出来そうですが、、、)
②PTFEシュリンクチューブ 中興化成の22φの物を使用
20φの銅パイプに22φのシュリンクを被せヒートガンでシュリンクさせましたが、均一に収縮させるのが難しく、気泡(空気だまり)が出来てしまいました(22φは2重に重ねて耐圧を上げようとしたため)。
単価も高価(6K円/m) で、要領を習得するまでには至っていませんし、測定結果(後述)から、シュリンクにするメリットがあまり、ありませんでした。
③PTFEシート、PTFEチューブ
チューブの場合、内径を挿入する銅パイプと同じにして、 銅パイプを低温で冷やして収縮させ、チューブに挿入して固定する方法が考えられます。 また、シートの場合は、外側のシリンダに沿わして挿入し、内側の銅パイプを滑らせる方法が考えられ、2mm厚、5mm厚のシート、チューブで下地さん、戸越さんの作品が測定に供試されましたが、PTFEの厚み以上の成果が出ておらず、後述のPTFEテープの重ね張りと、耐圧からはあまり差が無いように思われました。
④PTFEテープ 日東電工 No903. 0.23mmx50mmx10m
PTFEが何故接着できるのか不思議ですが、製品として市販されているので、これを使って、色々実験してみました。
④-1 基礎試験 - 重ねると耐圧は上がるのか?
右のような実験装置を使い、シリコーン系の接着剤(多分20μ程度)層があるので、重ねると耐圧が上がってゆくのか確認してみました。
結果、左のように、重ね合わせる枚数に応じて耐圧が上がってゆくことが確認されました。
また、この実験中に電圧を上げて行くと銅の電極の周辺からコロナ放電が始まるのが観測されました。
1mm厚のPTFEシートで実験しても、5KV以上では周縁でのコロナ放電が観測され、放電した後の銅の電極表面を見てみると、右のように変化が認められ、PTFEと銅電極の隙間で放電していたのではないかと推察されました。 この結果から、構造上、想定している誘電体を挟んだシリンダ形状のコンデンサでは5KV程度が限界ではないかと思われます
④-2 20φの銅パイプで重ね張り、小端の処理などの検討
左図のように、20φの銅パイプにPTFEテープを巻き付けて、その上から、0.1/0.2mm厚の銅シートを巻き外側シリンダを形成し、夫々の高周波耐圧を測ってみました。
基礎実験の値と数値が少し違いますが、重ねることにより耐圧が上がってゆくことは確認できます。 ここで使用したテープは幅が50mmなので、20φのパイプを覆うには幅が足りません(75mm幅のテープが必要)ので、継ぎ足し継ぎ足し、満遍なく規定数以上の重ねとなるようにしていますが、これがシートによる基礎実験との値の違いの原因かもしれません。
3次元上でテープと銅パイプの中心軸を平行にすることは非常に難しい(ちょっとでもズレると業界用語でいう「筍」になってしまいます)ので、縦方向に一回毎に張り付けるようにしています(右図)。
また、電荷が溜まるシリンダの先端の処理についても、検討してみましたが、「折り返し」ても「1cm伸ばし」ても、大差は認められませんでした(誤差の範囲?) 外側シリンダの作成方法として、ペンチで摘まんで外側にヘリを出すのと、丸めてヘリを作らない方法(内部の隙間のでき方が少し違う?)でも比べてみましたが、これも大差はありませんでした。
ただ、データから、重ね巻きの時は内側のテープの端は折り返し、最後の1-2回は先を1cm伸ばす。 外側のシリンダは丸めてカシメを作らない方法とする事にしました。 また、PTFEは柔らかいので、外側シリンダの端の内側シリンダと接触する部分については、薄いPTFEテープを張って、直接銅の端がPTFEを削らないようにしておく必要があります。
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